ウサギの避妊手術
ウサギは小型の草食動物であり、肉食動物に捕食される立場にあるため、子孫を残す必要性から優れた繁殖力を備えています。このため、雌雄が同居している場合は簡単に子ウサギが増えてしまいます。
雌の繁殖は主に卵巣から分泌される雌性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)に司られており、野生の状態では年に5~6回妊娠を繰り返します。妊娠期間は主に黄体ホルモンが優位になります。妊娠していないときは卵胞ホルモンが活発に働き、発情兆候が現れます。ところが、妊娠する機会がほとんど(あるいはまったく)ない家庭のウサギの場合は、常に卵胞ホルモンが優位となり、発情状態が続きます。この不自然なホルモンバランスは子宮や乳腺にさまざまな悪影響を及ぼし、寿命を左右するばかりでなく(4歳以上の未避妊のウサギは80%以上が子宮がんに罹っていると報告されています)、雌ウサギはイライラした状態が続くので、ご家族とコミュニケーションをとる上での大きな障害となります。
避妊手術は雌雄が一緒に生活している場合のバースコントロールを目的の他、雌ウサギに多い子宮、卵巣、乳腺の病気を予防するためにも行われます。また、ホルモンストレスが少なくなるために攻撃性がなくなり、とても穏やかになることから飼い主様が希望される場合もあります。
手術は全身麻酔下で、卵巣と子宮を摘出します。術後の回復なども含めて総合的に判断すると、1歳までに済ませることが理想です。入院は最低1日をお願いしています。
避妊手術をするとエネルギー要求量が減るため、術後の回復期が過ぎた頃から肥満防止のために食事量を減らす必要があります。個体差があるので一概には言えませんが、手術前の8割程度の量に押さえ、適切な体重を保つようにしましょう。
ウサギの去勢手術
ウサギは繁殖が旺盛なため、雌雄を同じ環境で飼うと無計画に子どもが増えてしまいます。雄同士の同居では勢力争いからケンカが絶えず、大怪我の原因ともなります。また、とても愛情豊かな動物ですが、元気な雄は尿のマーキング行動(スプレー)で縄張りを主張したり、強い所有意識のためにご家族に対して攻撃的になることもあります。これらの行動には、主に精巣から分泌される雄性ホルモンが関わっています。1頭だけで飼われている場合には大きな問題にならない例もありますが、去勢されていない雄は「子孫を残す」という本能の影響を強く受けるため、常にストレスにさらされていることは否めません。
去勢(精巣摘出術)はバースコントロールのほか、単独飼育の場合にもコンパニオンとして好ましくない行動を軽減する目的で行われます。また、発生頻度はそれほど高くはありませんが、精巣腫瘍の予防にもなります。術後は性格や行動が穏やかになり、雄特有の臭いも少なくなるので、とても飼いやすくなります。問題行動にはホルモン性の要因以外にもさまざまな要因が関与しますので、すべてが去勢で解決するとはいえませんが、尿スプレーは90%程度消失します。
通常は4~5か月齢になれば手術が可能です。全身麻酔下で、左右の精巣を摘出します。健康状態や同居動物の状況にもよりますが、1歳までに済ませておくとよいでしょう。入院期間は半日以上をお願いしています。
去勢をしてもしばらくは副生殖腺に残った精子で雌の妊娠を招くことがあります。雌雄の同居は1か月経ってからが安心です。また、去勢をするとエネルギー要求量が減るため、術後の回復期が過ぎた頃から肥満防止のために食事量を減らす必要があります。個体差はありますが、目安として手術前の8割程度の量に抑え、適切な体重を保つよう心がけましょう。